子どもはよく風邪をひきます。大人は年に数回しか病院に行かないのになんでだろうと思う方もいると思います。子どもが風邪をひきやすいことについて詳しくは別の記事で紹介していますのでそちらを参考にしてください。
風邪をひいた時によく病院から処方されるのが『ホクナリン®︎テープ』
ジェネリック医薬品だとツロブテロールテープとなります。
このテープ、貼ったことある保護者の方ならほとんど経験があると思いますが、いろいろトラブルが起こりやすいです。そんなトラブルと、その解決方法について日頃薬局での対面でお話しできない内容も含め書いていきたいと思います。
なお薬局で使用する「ホクナリン®︎テープ の使い方」の指導箋は こちら
お薬手帳に貼り付けています。
目次(タップして自動スクロール)
ホクナリン®︎テープのトラブルや悩み
ホクナリン®︎テープのよくあるトラブルや悩みをまとめると以下のようなものが挙げられます。
- 剥がれてくる → どうする?
- 朝起きたら行方不明 → 新しいのを貼ってもいい?
- お風呂 → 貼ったまま入っても良い?
- 貼った部分が赤い → 次の日も貼っても良い?
- 貼る場所 → どこに貼るのが良い?
①剥がれてくる:絆創膏で対応せよ!

ホクナリン®︎テープは皮膚に接触さえしていれば効果を発揮します。粘着力があるかどうかは関係ないのです。
ですからホクナリン®︎テープの上から絆創膏を貼って補強すればテープが皮膚に接触しますので効果が発揮されます。
②朝起きたら行方不明:新しいのを貼っても良い!
朝起きて無くなっていることもあるかと思います。いつ剥がれたかはっきりとわからないことも多いです。
文献情報からは、剥がれてからたとえ3時間後に貼り直しても大きな問題はないと考えられます。
ホクナリンテープ2mg再貼付後(3、6、9、12時間後再貼付)の血清中濃度のシミュレーションより、再貼付後の血清中濃度は最高でも再貼付しないときの約1.3倍程度であり経口投与時の最高血中濃度と比較し2/3以下です[(ホクナリン錠のCmax:3.12ng/ml(1mg単回投与)]。再貼付での過量投与による副作用は発現しにくいと考えられます。
Uematsu T, et al. Eur J Clin Pharmacol. 1993;44(4):361-4.
また、少なくとも半日貼っていれば効果は十分に保たれると考えられます。
ホクナリンテープは、貼付12時間後に約74%の薬物が皮膚へ移行していることが報告されています(喘息患者)。また、皮膚吸収(血清中濃度)に関して患者と健常成人はほぼ同等と推測されています。健常成人に24時間貼付した時の薬物の皮膚移行率が82~90%であることより、貼付12時間後の皮膚移行は24時間貼付時の約85%に相当します。
須甲松信. 臨床医薬 1995;11(4):809-18.
Uematsu T, et al. Eur J Clin Pharmacol. 1993;44(4):361-4.
③お風呂:貼ったまま入って良い!
お風呂には貼ったまま入っても問題ありません。ただし、患部が温かい状態が長く続くと薬の吸収が促進されることはありますので長湯は避けたほうが良いです。またお風呂に入った時は剥がれやすくなるのも事実ですので、気をつけておく必要もあります。
ホクナリンテープの支持体はポリ工ステルの被膜が張ってあるため水を通さず、薬剤が溶け出すことはないので、入浴時の経皮吸収に影響はないと考えられます。
メーカーホームページ(http://hokunalin.jp/doctor/faq/faq4.html#faq7)より
お風呂に入る前にホクナリンテープの縁が一部めくれている時などは、剥がれる可能性が高くなりますので、入浴後に貼り替えて頂くことをお勧めします。貼ったまま入浴される際は、あらかじめ絆創膏などで補強して頂くことも可能です。
④貼った部分が赤い:別の部位へ貼る!
皮膚に異物が接触しているわけですので接触性皮膚炎を起こすのは当たり前だと思います。赤くなる程度で済んでいるのであれば、貼り替える際に別の部位へ貼れば良いです。
⑤どこの部位に貼るのが良い?:どこでも変わらないが、剥がれにくさを考えると「喉元の胸の部分」が1番良い!
結論から言うとどこの部分に貼っても効果は変わりません。以下のグラフは「胸」・「背中」・「腕」にホクナリン®︎テープ を貼ったときの差を表しています。

見ての通りどこに貼っても大差はありません。
効果はどこに貼っても変わらないのですが、剥がれやすさは異なります。
個人的にどこに貼ったらもっとも剥がれにくいか検証した結果、「喉元」に貼るのがもっとも剥がれやすいことがわかりました。
以上、ざっとトラブルや悩みについて対策を書いてきました。他に気になることがあればコメント欄から質問してください。
〜著者のぶっちゃけた話〜

ホクナリン®︎テープ は、風邪をひいたときの咳には効かない!
そう考えています。理由は
β2刺激薬の貼付剤には喘息発作や予防には有効であるが「咳止め」では無い。通常の咳には効果は期待できない。
永井 良三・監, 五十嵐 隆・編 『小児科研修ノート』 第2版, 診断と治療社, P376, 2014より
上記の文献によります。
薬の効きかたから考えても、気管支を広げるだけで咳が止まるとは考えにくい!
喘息持ちのお子さんや、既にゼイゼイした咳(喘鳴)をしているお子さんには多少は効果があると考えますが、そうでなければ効かないと思うほうが良いです。
ホクナリン®︎テープによるトラブルについて書いてきましたが、本質のところを言うと「ホクナリン®︎テープなんて風邪の時には貼らなくていい」と考えています。そうすれば、そもそもトラブルや悩みも無くなるわけですね☺️。
薬局で薬を渡す時も、「気休めにしかならないな」と心の中で思いつつ渡しています。