子どもはよく風邪をひきます。咳や鼻水が出てくることも多いです。小児の感染の専門書には以下のように書かれています
6歳未満の子どもは、秋から春にかけては月に1回以上風邪をひく
Long SS, Pickering LK, Prober CG. principles and practice Of Pediatric Infectious Diseases 4th Ed. Elsevier’ Philadelphia, 2012 より

- 急に咳が出てきたけど、薬がない!どうしたらいい?
- 子どもの咳にハチミツがいいって聞くけど、本当に効くの?
そう言った疑問にお答えします。

咳は体に入った異物を外に出そうとする生体防御の反応なので無理に止めなくても良いとも考えられます。咳でしんどい時の対応と考えてもらえば良いです。
目次(タップして自動スクロール)
1歳になるまではボツリヌス毒素症の可能性があるためハチミツは厳禁です。
0歳児では、鼻水吸引をしてみてください。咳がだいぶ落ち着いてくるはずです。(鼻水吸引は1歳以上でも有効です。)
鼻水吸引は咳を減らし、風邪の期間を短くする。
Pizzulli A et, al : Ital J Pediatr, 44 : 68, 2018より
岡本 光宏 著 『小児科ファーストタッチ』 じほう, p18, 2019より
鼻水の吸引の方法に関しては別途記事を書く予定です。
電動タイプの鼻水吸引器、口で直接吸うタイプの吸引器どちらでも構いません。
鼻水を吸い出してあげてください。
ハチミツの咳に対する効果を検証する報告はいくつかあります。
中には咳止めよりもハチミツのほうが咳が止まったなどと結論づけるものもあります。
今回は
- 子どもの急な咳に咳止め薬がない時、少しでも咳を楽にする方法
- ハチミツに咳を抑える働きがあるという報告の紹介
を取り上げています。
では、ハチミツをどれほど飲ませれば良いかをみていきましょう。
- 2〜5歳:1/2 TSP ティースプーン半分程度
- 6〜11歳:1 TSP ティースプーン1杯程度
- 12歳以上:2 TSP ティースプーン2杯程度
TSP:tea spoon ティースプーンのことです。

咳が出てきてしんどそうにしていたら、上記の量を飲んでしばらく様子を見ます。そんなにたくさん飲ませる必要はないです。1時間以上たっても咳が治らなければもう一回追加しても良いでしょう。
あまりに咳がひどい時は、救急外来を受診してください。原因が単なるかぜではないこともあります。
- 白湯に混ぜる
- 生姜湯に混ぜる
- そのまま飲ませる
我が家では写真に示すようなお薬皿にハチミツを該当量と白湯をハチミツと同量ほど混ぜて飲ませています。

小児科の専門書で、薬がない時はハチミツで対処すると良いことが書かれています。
ハチミツには咳を抑える働きがあり、1歳以上では勧められる。
安次嶺 馨, 我那覇 仁 編 『小児科レジデントマニュアル』第3版, 医学書院, p115, 2017より
大元の根拠は以下の論文になります。
Cohen HA, et al : Effect of honey on nocturnal cough and sleep quality : A double-blind, randomized, placebo-controlled study. Pediatrics 130 : 465-471, 2012
この論文では300人を図のように4つの群に分けて検証をしています。最終的にはデータがきちんととれたものに関して解析を行っています。

ユーカリ味のハチミツ、ミント味のハチミツ、シトラス味のハチミツ、プラセボの4群です。3種類のハチミツとシラン(プラセボ)をサンプル(ハチミツかプラセボかどちらを飲ませるかわからないのでこう表現しました)として使用したとなっています。
ちなみに「プラセボ」とは、比較する上での対照で特に何も手を加えていないという意味です。
保護者や、医師はこの4種類の中でどれが子供に与えられたか、わからなくなっています。(このように飲ませる保護者も、子どもを診る医師も何を飲ませたかわからないようにする方法では信頼性が高くなります。)
咳が出ている子供に対して、就寝30分前に10 gを飲んで眠った時にどうなったかを点数をつけることで調べています。
咳の頻度について、点数の付け方は以下の通りです。
子どもの咳の状態 | 点数 |
---|---|
全く出ない | 0点 |
ほとんどでない | 1点 |
少し出る | 2点 |
出る | 3点 |
そこそこ出る | 4点 |
かなり出る | 5点 |
ひどく出る | 6点 |
咳が出てきた最初の日(1日目)はハチミツを飲ませずに様子をみるとともに咳の頻度を点数化しています。そして次の日の夜にサンプルを飲ませてどうなったかを再度点数化しています。
結果はグラフの通りです。

3種類のハチミツに比べてプラセボの点数が高いことがわかります。
すなわち、ハチミツでないものを飲んだ場合、ハチミツを飲んだものに比べてあまり咳の頻度が改善せず、点数が高くなったことがわかります。
逆に言えば、種類によらずハチミツを飲むと咳の頻度が改善している
ということになります。
専門家としては突っ込みどころが満載のように思います。
- 1日目と2日目で点数の差を検証しているが、日によって状態が異なることもあるので正確に「ハチミツの影響」で咳が減っているのか判別しづらい。
- 10gのハチミツはかなり量が多い。これだけ飲まないと効果が出ないのか?
- 点数の付け方は保護者の主観によって大幅に変化することが想定されるので正確な数値を反映できないことが考えられる。
まだまだありますが、これ以上あげても今回の趣旨とは外れてしまうのでこの辺にしておきましょう。
見てもらいたいのは、
「結果として点数は下がり、子どもの咳が少なくなっている」
ということです。
咳が治れば理由なんてどうでもいいと思いませんか?
その上で、ハチミツを飲んだ群の方が、プラセボを飲んだ群よりも点数の下がりかたが大きくなる傾向があり、咳の出る頻度はより低下したことがわかると思います。
この論文では、なぜハチミツが咳を抑えるのか?といったことまでは触れていません。咳が出る子に対して、「ハチミツを飲んだら咳の頻度が少なくなりましたよ」と言っています。
この論文から「ハチミツが咳に有効である」と断定はできませんが、有効性を示す一つのデータとしては成立するのではと思います。
この論文の後にも、ハチミツの咳を止める働きについて検証した論文が発表されています。
Olabisi Oduwole氏(何と読むのかわからずそのままの表記にしています)によって、2018年4月に発表された論文(Oduwole O, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10)によると
ハチミツは、無治療、プラセボより咳の頻度を減らす可能性がある
と結論づけています。
民間療法であった咳に対するハチミツの効果が徐々に科学的に解明されようとされています。
医療は「なんとなく」効くから ではなく「効くことが証明されているから」として治療を行います。
なぜ効くか?きちんと根拠を示している意見は信頼性が高いです。
少し難しい内容ですが、ハチミツで咳と睡眠が改善されたことが示されています。
子どもは、急に咳や鼻水が出てくることが多いです。そんな時に、苦しそうにしている我が子に何かできることはないかと保護者は思うものです。
ハチミツは咳に対する効果が徐々に解明されつつあります。
科学的にはっきりわかっていなくとも、何とかなるかもしれない方法を試すことは保護者としては大切ではないでしょうか?薬を処方してもらうまで、あるいは薬を処方してもらい服用した後も咳が続いている場合、咳を抑える方法として価値のあるものが「ハチミツを飲ませる」です。
どうにもならない時は一度試してみてください。
また、急にハチミツと言われても家庭にない場合もあります。
予めハチミツを購入しておくという選択肢もあるでしょう。
この記事が家庭でお子さんの咳に困ったときの助けになれればと思います。