乳幼児は頻繁に中耳炎を起こすことがあります。これは鼻と耳がつながっているため、鼻の中にいる細菌が耳の中に侵入して中耳炎を起こすことがほとんどだからです。
中耳炎を起こすリスク因子は大きくわけて3つあります。
- 解剖学的(体の構造)要因
- 免疫学的要因
- 環境因子
これらのリスクについて詳しく書いていきました。
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鼻と耳は密接な関係です。鼻と耳は、耳管と呼ばれる管状の器官でつながっています。 この耳管は、鼓室(中耳の空洞)内の空気圧を大気圧と同じにする調整機能や、 鼓室(中耳腔)内で発生する分泌物を咽頭(のど)に排出する機能があります。
♦︎太い ♦︎短い ♦︎角度が浅い
乳幼児の耳管は成人に比べて太くて短く、地面に対して水平となっているのに対して、 大人の耳管は、細く、長く、傾斜がついています。 子供に中耳炎が多いのは、鼻水を自分でかめないことに加えて、このような耳管の特徴が特長で、細菌が鼻から耳へ侵入しやすいため中耳炎を引き起こしてしまいます。

人は免疫(IgG、IgM、IgAなど)によって外部からの敵に対応する仕組みを持っています。免疫機構は生後からすぐに備わっているわけではありません。
上の図のように、生まれながらに母親からもらっていた抗体(IgG)は、生後3〜6ヶ月にかけてなくなっていきます。その後は自然と体の中で作られていきますが、2歳ごろまでは未発達です。
免疫機能が発達してくる2歳までは、「かぜ」を契機に中耳炎を起こしやすいです。
他にも様々な要因で中耳炎を引き起こします。重要なものを5つ挙げています。
- 集団保育・兄弟姉妹の存在
中耳炎を反復する子供の75%が保育園児で、兄弟姉妹の通園も含めると96.5%に昇ると言われています。 - 授乳姿勢やおしゃぶり
添い寝での授乳、おしゃぶりの使用は中耳炎を引き起こしやすい事が報告されています。 - 喫煙
母親が喫煙者の場合は、中耳炎のリスクが高まります。両親が喫煙している場合は、そうでない子供に比べて、中耳炎の原因となる肺炎球菌の保菌率が高いと報告されています。 - 母乳栄養の有無
母乳栄養や混合栄養の子供に比べて、人工乳(ミルク)のみの子供は中耳炎になる確率が高いと報告されています。母乳中に感染を抑える成分が含まれているからです。 - ワクチン接種の有無
肺炎球菌を受けている場合は中耳炎のリスクが減少します。
子どもが中耳炎を起こしやすい要因まとめ
<間接的要因> | <直接的要因> |
---|---|
短期間の母乳栄養 | 鼻閉 |
気候・季節 | 鼻閉時の嚥下 |
両親の喫煙 | 嘔吐 |
集団保育(低年齢児) | 授乳時の姿勢 |
兄弟姉妹の通園 | おしゃぶり |
家庭内 | 寝相(うつ伏せ) |
低年齢(2歳未満) | 強い鼻かみ・両側同時の鼻かみ |
未熟児・男児 | 鼻すすり癖 |
遺伝的要因 | くしゃみの方法(鼻をつまんでする) |
スイミング(飛び込み、もぐり、クイックターン) | |
飛行機に乗った後 |

できるだけリスク因子を排除すれば、中耳炎はある程度防ぐことができます。
なんでこんなに中耳炎を繰り返すんだろう?と思った時に、リスク因子を見直してみてください。
家庭でできる中耳炎対策
- タバコへの曝露の回避
- 手洗いの徹底
- 鼻水の吸引(無理のない程度に、こまめに)
- 添い寝での授乳を避ける
今回記載した対策をすることで、少しでもお子さんが中耳炎を起こすことを防げたらと思います。
- 小児耳 2011; 32(3): 248-253