
- 子どもが熱を出した時に摂る水分はお茶でいいの?
- 経口補水液って聞いたことあるけど、お茶とどれくらい違いがあるの?
- 経口補水液は自宅でも作れるの?
- 水分の摂取の仕方はどうすればいいの?
こういった疑問に答えます。
子どもは、体に占める水分割合が大きいため、成人に比べて脱水症状に陥りやすいです。
脱水症状には様々な理由で陥りますが、頻度の高いもとして、「発熱」、「下痢」、「熱中症」などが挙げられます。
以前は脱水症状と聞くと、すぐに「点滴」となってしまっていたこともありましたが、最近では点滴をせずとも、経口補水液で脱水を防ぐことができることがわかっています。
いざとなった時に、調べられるよう記事を書きました。
なお、難しい内容もありますので、ポイントとしては
- 「飲ませるもの」
- 「経口補水液の作り方」
- 「経口補水液の飲ませかた」
の3つを重点的に見てもらえると良いと思います。
目次(タップして自動スクロール)

嘔吐・下痢・熱中症など、脱水が心配な小児に対して経口補水療法は有効です。
経口補水療法は点滴と同じ効果があります。

OS−1が望ましいです。
塩分濃度:40〜60 mEq/L 糖分濃度:1〜2.5 % 浸透圧が285 mOsm/Lよりやや低い という条件に合致するからです。詳しくは後述します。
アクアライト、アクアソリタ、2倍に薄めたりんごジュースでも代用できます。(味:アクアソリタの評判が良いです。)
離乳食を始めた頃から飲ませて良いです。(離乳食開始以前はうまく飲めない事があり点滴の方が無難です。)
経口補水液は塩分濃度が高めであり通常は美味しくはないですが、脱水の時は美味しく感じる事が多いです。味を嫌うといけないので何種類か用意し、飲めるものを与えると良いです。

OS-1、アクアライト、アクアソリタを味見してみました。
脱水がない状態ではアクアソリタがやはり味はよかったように思いました。
母乳や粉ミルクを飲んでいる乳児は、そのまま母乳やミルクを続けて良いです。
ご家庭で簡単に作れるレシピを紹介します。
水 1 L
食塩 2 g
砂糖 20 g
これらを混ぜると、簡易経口補水液になります。
実際に作る際は1Lの容器はなかなかないので、500 mLのペットボトルに、塩 1 gと砂糖 20 gを入れてから水を入れて 500 mLとすれば良いです。
以下に比率表を作っておきましたので、作りやすいものを選んで作ってください。
ペットボトル/材料 | 500 mL | 1 L | 1.5 L | 2 L |
水 | 500 mL | 1000 mL | 1500 mL | 2000 mL |
食塩 | 1 g | 2 g | 3 g | 4 g |
砂糖 | 10 g | 20 g | 30 g | 40 g |
例えば、1.5 Lの容器であれば、塩は 3 g、砂糖 30 gを混ぜることになります。
飲ませかたのポイント

- 時間をかけて
- 少しずつ
pointはこの2点です。このように①時間をかけて、②少しずつ飲ませます。
弱っているお腹に負担をかけないようにするためです。
飲ませかたの例 *重要*
5分おきにスプーンやスポイトを用いて 「5 mL」 ずつ飲ませます。
症状が落ち着いているなら5分おきに 「10~20 mL」ずつに増やして飲ませます。
3時間かけて「300~500 mL」ほど飲ませることが目標です。
嘔吐や下痢があれば、そのたびに「50~100 mL」程度の水分を追加します。
途中で眠ってしまったら「起きたら必ず再開する」と良いです。
脱水症状が改善してくる時の目安
経口補水液を飲ませて、どのように変化したら治っている証拠なのかポイントを紹介します。
- おしっこが増える
- おしっこの色が薄くなる
- 口の中や唇が潤っている感じが出る
- 顔色が良くなる
などが脱水症状の改善の目安です。お子さんの様子をこまめに見ておいてあげてください。
長時間ものを食べずにいると小腸の機能が悪くなります。水分を十分に摂取した後は食事を再開した方が良いです。
経口補水を開始しておおよそ6時間後から、炭水化物と塩分と水分が多めの食事を再開すると良いです。
例)うどん、豆腐、おかゆ、バナナ、りんご など
ご家庭で対応できる「経口補水液」について書いてきましたが、全てがご家庭でできるわけではありません。もちろん医療機関で治療が必要な場合もあります。

医療機関で治療が必要なポイントは以下の2つの場合です。
- 嘔吐を繰り返す、経口補水液を嫌がる などで水分摂取ができない場合
- ぐったりしてきた場合や顔色が悪くなってきた場合
こう言った場合は医療機関で点滴をした方が良いです。
結論から言うと、脱水の時にはお茶やスポーツドリンクは避けた方が良いと考えられます。
理由①:さらなる脱水を引き起こす可能性がある
お茶(やスポーツドリンク)には塩分が少なく、水だけが体に吸収されて血液が薄められてしまいます。
体は薄められた血液を元に戻そうとして結果的に血液の水分量が不足し、さらなる脱水を招きます。
いわゆる水中毒というものです。
理由②:経口補水液の方が吸収が良い
人間の体の水分の吸収には3つの要素が関係しています。
- 「塩分の濃度」
- 「糖分の濃度」
- 「浸透圧」
塩分濃度:40〜60 mEq/L
単位の mEq/Lは見慣れないと思いますが、ここは一旦そういうものだと思って読み飛ばしてください。
糖分濃度:1〜2.5 %
である時に最も水分の吸収が良い事がわかっています。
「浸透圧」とは聞き慣れない言葉ですが、濃いものを薄めようとして働く力のことです。この浸透圧の力によって水分が移動します。
浸透圧が285 mOsm/Lよりやや低い
人間の体の浸透圧はおおよそ285mOsm/L、この値よりもやや低い浸透圧であれば吸収されやすいことを意味します。
以上を踏まえて、下表の数値を見てみましょう。
商品名 | 塩分(Na)(mEq/L) | 糖分(%) | カロリー(kcal)(100mL当たり) | 浸透圧(mOsm/L) |
---|---|---|---|---|
OS-1 | 50 | 2.5 | 10 | 250 |
アクアライト | 30 | 5.5 | 22 | 260 |
アクアライトORS | 35 | 5.0 | 16 | 200 |
アクアソリタ | 35 | 1.8 | 7 | 175 |
ポカリスエット | 21 | 6.2 | 25 | 370 |
麦茶 | 5.25 | 0 | 0 | データなし(かなり低いと思われる) |
表の中から 塩分濃度:40〜60 mEq/L 糖分濃度:1〜2.5 % 浸透圧が285 mOsm/Lよりやや低い という条件を探してみます。
すると、OS-1の成分で 塩分濃度:50 mEq/L 糖分濃度:2.5 % 浸透圧が250 mOsm/Lという値を見つけることができます。
表の数値からは、理論的には「OS-1」が最も水分の吸収が良いと言えます。
上記の難しい内容を動画でわかりやすく紹介したものがあります。
こちら ↑ から視聴できます。
- スポーツドリンクのメリット
固形物が食べられない時のエネルギー源として摂取すると良いです。経口補水液に追加する形で摂取すると良いです。 - お茶を摂取するタイミング
食欲が回復してきてからの水分として摂取すると良いです。
生後半年から6歳までの乳幼児の1日の必要エネルギー量は700〜1600kcalです。
最も糖分の高いポカリスエットを500 mL1本飲んでも125 kcalとなるため、経口補水液による糖分の摂りすぎとはならないと考えられます。
アクアライトは糖分がやや高めであり注意が必要です。
経口補水液の中ではアクアライトにのみ虫歯への注意喚起があります。
- 経口補水は点滴と同じ効果があります。
- ご家庭でも簡単に経口補水液を作ることができます。
- 時間をかけてゆっくり飲ませます。
- 補水ができて回復してきたら消化の良いものから食事を再開します。
- 必要なときは迷わず受診してください。
- 経口補水を行う時にお茶やスポーツドリンクは避けた方が良いです。
- 虫歯に注意のある経口補水液はありますが、糖分の取りすぎにはなりません。
今回は以上となります。
- 岡本光宏 著 『小児科ファーストタッチ』
- 永井良三ほか 著 『小児科 研修ノート』
- 内山 聖ほか 著 『標準小児科学』第8版
- 日本外来小児科学会 『お母さんに伝えたい 子どもの病気 ホームケアガイド』第4版
- 谷口英喜 経口補水療法 日生気誌 52(4) : 151-164 2015
- 大塚製薬OS-1ホームページ
- 大塚製薬 お子さまの下痢・おう吐時 経口補水液オーエスワンの飲ませ方のコツ
- 大塚製薬 ポカリスエット ホームページ
- 味の素 アクアソリタ ホームページ
- アサヒグループ アクアライト ホームページ