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添付文書を読んでみる〜ケイツーシロップ〜

小児科の門前薬局に勤めていた時に、よくケイツーシロップの処方箋がやってきました。

個人的には新生児の出血を予防するためには服用は必須だと考えています。

新生児のビタミンK欠乏性出血が起こる頻度は決して高いわけではありませんが(10万人に対して1.5人程度)、起こってしまうと重篤な後遺症を残したり最悪死に至ります。

予防することに意味があるものだと考えています。

そんなケイツーシロップの添付文書情報を今回は見ていきたいと思います。

<組成から分かる注意点>

本剤は、1mL中にメナテトレノン2mgを含有する黄色澄明のシロップ剤である。
添加物として安息香酸ナトリウム、クエン酸水和物、ゴマ油、水酸化ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、D-ソルビトール液、パラオキシ安息香酸エチル、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、香料を含有する。

ケイツーシロップ 添付文書

注目したいのは「ゴマ油」です。

これまた稀かもしれませんが、ゴマにアレルギーがある場合は注意が必要です。

アレルギー専門医に相談する必要がありますね。

ツイートでは「ケイツーシロップを服用したときにゴマアレルギーになる」かもしれない?と懸念されています。

もともとゴマにアレルギーがあるのはわかりますが、「ケイツーシロップを飲んだからゴマアレルギーになる」というのはやや飛躍した考え方だと思います。

ただし、服用したらゴマアレルギーになるかならないかの根拠はわかりません。

これまた、アレルギー専門医に相談する必要があります。

<性状>

本剤は、黄色澄明の液で、オレンジようのにおいを有するシロップ剤である。

ケイツーシロップ 添付文書

構造から、芳香のある色付きの薬剤であることはわかるかと思いますが、具体的にどんな色(黄色透明)で、どんな匂い(オレンジのような)がするがを知っておくことは大切です。

というのも、ケイツーシロップは外から目で見えないように包装されており、色や匂いは開封しないとわからないからです。

<ケイツーシロップは酸っぱい>

pHは3.0〜5.0

ケイツーシロップ 添付文書

酸性の製剤であることがわかります。このことから実際に服用すると酸っぱさを感じるということになります。

酸っぱさは新生児にとっては刺激につながるとも考えられるので注意が必要です。

ちなみに、製剤が酸性であるのはきちんと理由があります。

メナテトレノンは、温度及び湿度に対しては安定であるが、光又はアルカリに不安定で、分解して 着色が強くなる。
メナテトレノンを界面活性剤を用いて可溶化し、メナテトレノンの各種 pH 溶液(pH2~12)を調製 し、メナテトレノンの pH に対する安定性を測定したところ、液性がアルカリ性に傾くにつれて分解が促進した。

ケイツーシロップ インタビューフォーム

アルカリ性では不安定で分解してしまうのです。

主薬を安定して保存するためにわざと酸性にしているということです。

<包装から取り出した場合はなるべく早く服用させる>

メナテトレノンは、温度及び湿度に対しては安定であるが、光又はアルカリに不安定で、分解して 着色が強くなる。

ケイツーシロップ インタビューフォーム

先ほども同じ記載をしましたが、今回は光に不安定であることを強調します。

光に不安定ということは当然ながら包装から取り出すと分解が始まるということです。

遮光保存すれば24時間程度は保存可能のようですが、なるべく早めに飲ませたいところです。

<効能または効果>

  • 新生児出血症及び新生児低プロトロンビン血症の治療
  • 新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防

<用法・用量>

新生児出血症及び新生児低プロトロンビン血症の治療

通常1日1回、1mL(メナテトレノンとして2mg)を経口投与する。
なお、症状に応じて3mL(メナテトレノンとして6mg)まで増量する。

新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防

通常、出生後、哺乳が確立したことを確かめてから、1回1mL(メナテトレノンとして2mg)を経口投与する。その後、2回目として生後1週間又は産科退院時のいずれか早い時期、3回目として生後1ヵ月時にそれぞれ1回1mLを経口投与する。

予防投与の場合、日本の使い方としては

  1. 生まれてすぐ
  2. 生後1週間以内(退院時)
  3. 生後1ヶ月

の3回投与となっています。

余談ですが、我が子にも3回投与したことが母子手帳に記録されています。

ただし、生後3ヶ月までは週1回投与するといった方法もあります。

添付文書上では

新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防投与において、1ヵ月健診時にビタミンK欠乏が想定される症例では、生後1ヵ月を超えて投与を継続すること等を考慮する。

ケイツーシロップ 添付文書

となっています。

この理由を少し調べてみました。

Anton H. Sutor, M.D.1 New Aspects of Vitamin K Prophylaxis

3回の投与では新生児の出血を100%予防できなかったと報告があるためです。(紫のマーカーを引いている部分)

一方で毎週ケイツーシロップを投与すると、出血は0で100%予防できたとする報告があります。(緑のマーカーの部分)

この論文自体がメタ解析をされているかどうかはっきりわかりません(おそらくされていない)。質の高いエビデンスとは言えないと思われます。

ただし発症を予防することが目的ですので、リスクのある児にはこう言った投与の仕方もありだと思います。

<相互作用>

ワルファリンの作用と拮抗するので、ワルファリンの作用を減弱します。

先天性心疾患などでワルファリンが必要な場合にはケイツーシロップの服用ができない場合も考えられます。

<小児等への投与>

1. 低出生体重児への投与
低出生体重児に対する安全性は確立していない。
(使用経験が少ない)

2. **出生後早期の新生児への投与

本剤は、シロップ剤で高浸透圧になっているため、出生後早期の新生児への投与は白湯で10倍程度に薄めるか、又は哺乳確立後に投与を行うこと。

ケイツーシロップ 添付文書

低出生体重児に投与する場合は、小児科専門医の監督の元で投与がなされる必要があります。

飲み方ですが

白湯(滅菌水)で10倍程度に薄めて服用させます。

ケイツーシロップは浸透圧が2700 mOsm/Lであり、生理食塩水の10倍の濃さの製剤です。

10倍濃いのでのむときに10倍に薄めてのむということになります。

ミルクに混ぜて飲ませるのも1つの手です。

飲ませるときに、スティック包装から直接口には入れないでください。

新生児又は乳児では、スティック包装から哺乳瓶やスプーン等に移して服用させること。(スティック包装から直接服用させると誤嚥や口唇が傷付くおそれがある。)

ケイツーシロップ 添付文書

<投与の注意点>

新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防投与においては国内のガイドライン等、最新の情報を参考にすること。

ケイツーシロップ 添付文書

「エビデンスが蓄積されている」とは言い難いのでこのような表現になったのでしょうか。

いずれにしても医学的根拠を持って服用することが大切ですね。

<ケイツーシロップの予防投与は自費>

**本剤を「新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防」の目的で使用した場合には、保険給付の対象とはなりません。

ケイツーシロップ 添付文書

疾病の治療ということではないので、保険は使えず費用は自費となります。

参考文献

  • ケイツーシロップ添付文書
  • ケイツーシロップ インタビューフォーム
  • Anton H. Sutor, M.D.1 New Aspects of Vitamin K Prophylaxis

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